

INTERVIEW
先人の偉業を再定義し形創る
次なるメインストリーム
KENTA
SUZUKI
鈴木 健太
新規事業開発
工学府 機能発現工学専攻 修了
[拠点:浜松本社]
スズキの歴史に名を刻む、新たなメインストリームを。私は現在、新規事業開発を手がけています。もともとは農業ロボットの量産化を目指していたものの、コスト面や汎用性など、様々な課題がありました。試行錯誤を重ねる中、最終的に100社を超える反響をいただいたのは、電動車いす(セニアカー)の足回り技術を応用した「電動モビリティベースユニット」の事業でした。
50年以上電動車いすで培った技術をベースとしたスズキの電動モビリティベースユニットは、 CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の時流に乗って一気に事業化へ。とはいえ私自身、最初からうまくいったわけではありません。シリコンバレーでの衝撃的な出会いと、「100点中5点でも良いから着手しなさい」という上司の熱意に感化され、今があります。可能性にチャレンジしつづけ切り拓く、新たなイノベーション。その舞台裏についてお話ししたいと思います。
PROFILE
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2011
4月 スズキ入社。開発部付けIT部門に配属。その後、部署の編成によりIT本部所属へ、社内システムの運用保守などを担当。
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2019
4月 経営企画室に異動。中期経営計画の作成や生産性向上プロジェクトなどに従事。
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2021
4月 スズキコネクテッドセンターへ異動。スズキコネクトのアプリ企画を経て、本部長特命業務の推進及び多目的電動台車の事業企画へ。
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量産の壁を乗り越え、電動モビリティベースユニットが事業化へ
スズキは、CASEの先を見据えた新規事業開発にも取り組んでいます。中でも今私が携わっているのは、電動車いす(セニアカー)の技術を応用した台車事業。様々なロボットの足回りとなる「電動モビリティベースユニット」の他業種展開を進めています。
もともとこの事業は、地元静岡の農業ベンチャーである株式会社エムスクエア・ラボ様との共同事業が始まりです。ただし、農地向けの量産には様々な課題が。たとえば、生産者ごとに作業のスタイルが異なるため、ロボットでの画一的な作業が難しいことなどがありました。
試行錯誤している中、とあるメーカー様から伺ったロボットの足回りに関するお悩みをきっかけに、農業以外にも用途があるのでは?と展示会に出展しました。すると様々な業界から引き合いをいただくようになりました。たとえば、屋外搬送や、降雪地帯で活躍する除雪ロボットの足回りなどに「スズキの台車を使いたい」と。
なぜ台車に注目が集まるのか、私たちも最初は半信半疑でした。ただ、自動車の厳しいテスト基準を満たしたスズキの台車は、屋外での走破性や耐久性が抜群で、これが他社には真似できない価値だと分かってきたのです。
2023年の「国際ロボット展」にも出展し、移動用や除雪用、農業用、配送用、運搬用まで、電動モビリティベースユニットの使用事例を紹介。100件以上の問い合わせをいただき、様々な業界でのモニター利用が始まりました。事業化の見込みも立ち、2030年度までの新中期経営計画にも「サービスモビリティ」として新事業領域に名を連ねることに。現在は他企業とのパートナーシップを広げながら、製品化に向けた改良を続けています。
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100点中5点でも前に進む、行動力で切り拓く活路
工学部だったことからものづくりに憧れがあり、新卒でスズキに入社。配属先は開発本部でしたが、部付きのIT部門で社内システムの保守運用を担当していました。ITについては未経験でゼロから勉強することに。ですが、その中で様々な経験を積むことができました。
たとえば、ITが未経験だったからこそ、コミュニケーション能力が磨かれたことです。システム開発はできる人に頼らざるを得なかったので、私は各部署の要望をまとめることに徹していました。不具合対応などハードな現場にも呼ばれますから、精神力も鍛えられたと思います。臆せずに飛び込む行動力は、今の仕事にも活きていますね。
その後、2017年に始まったシリコンバレーでの現地研修に参加。まさに第一期のメンバーとして、スタートアップの本場でイノベーションの手法や起業家精神を学びました。その時、スピード感と行動力にあふれた今の上司と出会い、「この人の下で働きたい」という目標ができました。それが、コネクテッドセンターへの異動を志願した理由です。
コネクテッドセンターには、社内から様々な新規事業のアイデアが寄せられます。異動後は私も、そうした特命業務の推進に尽力してきました。「うまくいくかどうか」「どうやってやろう」と悩んでいては、アイデアはアイデアのまま。上司から「君がやらなきゃこの話は0点だ。5点でも良いから、行動しなさい」と鍛えてもらいました。
台車事業についても、最初からうまくいったわけではありません。当初、期待していた農業用ロボットは量産の壁を超えられず、他にどう活用できるか見当も付かない中、名刺やパンフレットをたくさん配布し、営業してきた中でやっと事業化の兆しが見えたのです。
新規事業は出口の見えない旅だと思います。失敗を恐れずに挑戦することでしか活路を拓けないことも学びました。
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歴史に名を刻むイノベーションを事業の形に
電動モビリティベースユニットの事業化が決まり、今ではチームメンバーも増えました。私たちの仕事は、スズキの次の100年を創る新規事業になるかもしれないと、私自身感じていますし、メンバーにもそう伝えています。
スズキの歴史館の3階には、創業時(1909年)の織機に始まり、二輪、四輪、船外機へと発展していく様子が展示されています。その直近に置かれているのは、1973年に開発がスタートした電動車いす。そのメインストリームを引き継ぎ、電動モビリティベースユニットがスズキの歴史として展示されるプロダクトになるかもしれません。
今後の目標は、電動モビリティベースユニットを基盤にした新たな売上を創出することです。一緒に挑戦してくれる仲間を増やしながら、事業の成長に貢献していきたいと思います。
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チャンスを掴むのは自分次第
スズキは、若いうちからチャンスを与えてくれる会社です。私自身、シリコンバレーでの現地研修や、経営企画室へのジョブローテーションなど、様々な経験をさせてもらって今があります。チャンスが来たときは、それまでの固定概念にとらわれず、ぜひ飛び込んでみてほしいと思います。
※部署名、内容はインタビュー当時のものです。