INTERVIEW

異業界から農業の課題を考え、
農家さんの嬉しいをカタチに

YUKI
EBIYA

蛯谷 裕輝

サービス企画

新規事業開発

生命理工学院 植物生理学専攻 修了

[拠点:浜松本社]

「60年愛される軽トラ」から始まった、スズキと農業の深い絆。高度経済成長期に生まれた軽トラック「キャリイ」は、社員の通勤と家業の農業を支えるために生まれたコンセプトです。以来スズキは農作業を支えつづけるパートナーとして、農業界全体の課題に目を向け、新たなソリューションを生み出そうとしています。

大学院では、植物のDNAや油分といった分野の研究に没頭し、前職では農業の経営・マネジメント領域を経験しました。一見、異質なキャリアに見えますが、「農業の付加価値を高めたい」という一貫した想いがあって選んだ道です。

畑違いとも思えるモビリティメーカーに入社したのは、異業種から農業の幅広い課題を見つめ直し、これまでにない切り口から課題解決に挑みたいと心に抱いていたから。スズキが農業に取り組む理由はなにか。異業種から飛び込んだ私のキャリアを踏まえ、私たちが農業分野で目指す未来についてお伝えしたいと思います。

PROFILE
  • 2023

    スズキ入社。農業分野の新規事業開発を担当し、丹波篠山を中心に活動。

  • 2025

    バイオガス生成における残渣物を肥料として有効活用する企画・戦略の立案へ。

  • 農業の現場にスズキの力をかけあわせ、抜本的な課題解決に取り組む

    実は、農業とも絆の深いスズキ。高度経済成長期には、家業の農業との兼業で勤務する社員が多かったことから、野菜や資材を積んで運べる軽トラックを着想。1961年に初代「キャリイ」が発売となり、以来、農家さんの運搬作業に貢献してきました。時が経ち、近年では農業界の担い手不足による販売台数の減少という大きな課題に直面しています。そこで、コネクテッドセンターでは農業の課題に目を向け、新しいソリューションの創出を目指しています。

    私が取り組んでいるテーマは、バイオガス生成における残渣物を肥料として有効活用する企画・戦略の立案です。スズキが取り組むバイオガス事業とは、牛の糞尿から発生するメタンを用いて自動車用燃料を精製する取り組みのこと。カーボンニュートラルの実現はもちろんのこと、農村地域の活性化や雇用創出など、循環型社会の形成に貢献できると、2022年8月からインド全土に展開されました。

    しかし、バイオガスの生成を継続的に行うには、大量に排出される残渣物を処理しなければならないという課題があります。そこで私は、この残渣物を肥料として有効活用・流通させる仕組みの確立に取り組んでいます。肥料としての品質はもちろんのこと、使いやすさや価格帯、肥料を使った農作物の付加価値までを含めた“使っていただく理由”を設計しなければいけません。前職での農業従事者としてのマネジメント経験を活かし、肥料の効果や価値などを分析しながら、包括的なソリューションを模索しています。

  • 異業種の価値観を取り入れるため、必要だったキャリア転向

    私がスズキへの入社を決めた理由はいくつかありますが、一番の理由は、異業種である自動車メーカーから農業の課題解決に携わりたいと考えたことです。子どもの頃から生物が大好きで、大学院では植物系の研究室に所属し、価値の高い植物油を多く含む品種の開発に没頭しました。その後、社内ベンチャーとして農業事業を展開する化学メーカーに入社し、イチゴ栽培や植物工場のマネジメントに従事。ベンチャーの社風も手伝い、入社から約2年で、農業の運営に必要なノウハウを身に着けた感覚がありました。

    一方で、PDCAサイクルが長いという農業の課題にもぶつかることに。農作物の多くは、たねを植えてから収穫を迎えるまでに数カ月以上かかります。すると、何かを改善するチャンスは1年に1度程度しか得られません。また、生産以外にも人材や収支のマネジメントも担う中、改善施策に着手できないまま次の繁忙期を迎えてしまうことも。そのように、やり方が固定化されていくことを悔しく思っていました。

    そんな折、スズキが農業分野で新規事業を立ち上げることを知りました。同じく軽トラック製造を手掛けるダイハツ工業様と兵庫県の丹波篠山に滞在し、農業現場の課題抽出に取り組む。そして、農家の方々と共に畑を耕し、収穫を行いながら困りごとの生の声を収集し、農業課題の解決へとそれぞれの強みを生かしたアプローチをしていく、と。また、浜松の言葉で“やらまいか精神”といって、新しいことに果敢にチャレンジする精神をスズキの社風にも感じられ、キャリアチェンジを決断。私も入社の翌週からさっそく丹波篠山に足しげく通うことになりました。

    その中で販売課題に着目しプロトタイプの開発にこぎつけたものの、販売には至らず、道半ばで残念な思いもしました。ただ、「お客様の立場になって価値ある製品を作ろう」というスズキの理念のもと、継続して丹波篠山に通いつめる中で、農業現場の力になりたいという気持ちが明確になったと思います。

    というのも、現地の農家さんは「スズキという会社視点から農業の困りごとを一緒に考えてくれるのがうれしい」と、いつも期待してくれたからです。その直後に他部署で立ち上がったバイオガス事業が現実味を帯び、私はその推進に注力することになりました。自ら現場に入り込み、リアルな課題を抽出してきた丹波篠山での経験を、バイオガス事業を通じて発揮しています。

  • 持続可能な農業は、人々のウェルビーイングにつながる

    将来の目標・将来像と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?私は60代になったら農業をする側に戻り、農家として働きたいです。課題が多くネガティブなニュースも多い農業ですが、素晴らしいこともたくさんあります。自然と触れながら一生懸命働くことで自分がその一部であると認識できること、様々な恩恵を受けて育った農作物をいただくこと。そして、育てた農作物を通して老若男女が喜ぶ姿を実感できること。農業には人が豊かに生きる術が詰まっていて、素晴らしいサイクルだと考えています。

    直近の目標は、バイオガス生成における残渣物を肥料として有効活用する企画・戦略を立案すること。そうした活動を通して、循環型のカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。中長期的には今よりもっと農家さんが嬉しい・楽しいと感じる地域農業の実現に貢献できればと考えています。農業の未来を切り拓く一助となれるよう、これからも挑戦していきます。

  • 運転好きな仲間たちと広げるカーライフ

    以前は首都圏生活で、車社会の浜松の暮らしに慣れるか不安もありました。ですが、運転好きで心温かい人が多い浜松の地では、仲間のドライブで遠出も楽しめています。先日は、部署のメンバーでスキー場まで旅行。近場は自分で運転し、遠出は仲間と共にといった楽しみ方は、浜松ならではです。

     

    ※部署名、内容はインタビュー当時のものです。